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漫画家生活30周年 こうの史代さんが暮らす福知山にて「こうの史代展」開催


漫画家生活30周年を迎えた本市在住の漫画家こうの史代さんの過去最大規模の展覧会を6月8日~7月27日の期間、福知山市佐藤太清記念美術館にて開催します。
大ヒット作「夕凪の街 桜の国」(手塚治虫文化賞新生賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞)や「この世界の片隅に」(文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞)をはじめ、福知山市が舞台の最新作「空色心経」など500枚以上の漫画原画、絵本原画、作品のコンテやメモ、制作風景を記録した初公開の映像を展示します。
「こうの史代展」は金沢21世紀美術館(5月2日~25日)からスタートし、福知山にて開催後、全国巡回展示をする予定です。
1 「こうの史代展」について
展覧会名:漫画家生活30周年 こうの史代展
鳥 がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり
開催期間
2025年6月8日(日曜日)~7月27日(日曜日) 休館日:毎週火曜日
9時00分~17時00分 (ただし入館は16時30分まで)
※会期中、前期・後期と展示替えを行います。展示替日は改めてお知らせします。
開催場所
福知山市佐藤太清記念美術館 (京都府福知山市字岡ノ32-64)
入館料
大人720円 子ども350円 ※通常料金と異なります。
主催
福知山市 福知山市佐藤太清記念美術館
協力
呉市立美術館、コアミックス、朝日新聞出版、日本文芸社、平凡社
監修
福永信
企画
青幻舎プロモーション
2 こうの史代さんと福知山市の関わり
○こうの史代さんは、2016年に京都府福知山市に移住。
○福知山ゆかりの武将・明智光秀が主人公の大河ドラマ放送終了後、福知山城公式サイト立ち上げにあわせて、本市からの依頼でイラスト「麒麟のいる街」を描きおろし。イラストは、福知山市役所職員の名刺やいがいと!福知山ファンクラブの市外会員証などでも使用されている。
〇福知山市立図書館開設100周年を記念し、「こうの史代『荒神絵巻』作品展」を開催(2025年)。また図書館雑誌スポンサー制度により、こうのさんは6誌の雑誌を提供している。
〇福知山市内唯一の映画館「福知山シネマ」は、こうのさんイラストの懸垂幕を掲げるほか、過去にこうのさんのトークショーや原作映画「この世界の片隅に」上映とパネル展示を実施。
〇こうの史代さんの最新作「空色心経」(朝日新聞出版)では、福知山を舞台に由良川の河川敷などが細やかに描かれている。
3 見どころ
○漫画家こうの史代さんの過去最大の展覧会
大ヒット作「夕凪の街 桜の国」「この世界の片隅に」の原画展はこれまで数多く開催されてきましたが、デビューから現在までを網羅した大規模な回顧展は、本展が初めてです。500枚以上の漫画原画を展示、膨大な挿絵原画、絵本原画、作品のコンテやメモ、ブログ「こうのの日々」に登場するスケッチブック、制作風景を記録した初公開の映像など、こうの史代さんの画業のすべてがわかる展覧会です。
○デビュー前の貴重な原画も展示
デビュー前の原稿、また高校生の頃に制作した漫画の原画も展示します。すでにこうの史代さんならではのタッチが、楽しい漫画の世界に誘います。
○「1枚の絵」としての漫画原画
こうの史代さんはその初期からアシスタントを起用せず、原稿をすべて一人で描いています。着彩も本人がやっています。また一部を除いて、スクリーントーンをほとんど使用していません。原画で私たちが見ているのは、作者自身の手によって描かれた線です。「1枚の絵」として、その線の躍動する魅力、新鮮な色彩の力を感じていただけると思います。
○展示は「読める」ように工夫
連載作品の場合は1話単位、短編は全ページを基本に原画を展示いたします。作者が構成したストーリーを分断せず、制作しているその時の「漫画家の気持ち」を体感することができます。各単行本のカバーのカラー原画も必見です。
4 関連イベント
会期中のどこかで、こうの史代さんご本人によるライブペインティングを行います。
日時等詳細は5月中旬頃にお知らせします。
5 漫画家こうの史代さんについて
1968年広島市生まれ。広島大学理学部中退。放送大学教養学部卒。1995年、「街角花だより」の連載で漫画家デビュー。インコとの日常を描く4コマ漫画「ぴっぴら帳(ノート)」で人気を博す。ニワトリと少女のユニークな日々を綴ったショートストーリー漫画「こっこさん」、子供の心を見開きページに釘付けにしたカラー漫画「かっぱのねね子」も同時期に連載。夫婦の気ままでコミカルな永遠の一日を捉えた「長い道」、こうの自身より年齢が上の主人公を初めて描いたドタバタ二世帯喜劇「さんさん録」でさらなる新境地を開く。原爆の被害とその後に続く“終わっていない”日々を真摯に紡いだ「夕凪の街 桜の国」を発表し、話題に。同作で第9回手治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞、映画化やドラマ化もされた。広島の軍都・呉の戦災を描く「この世界の片隅に」は、戦前から戦後まで、個人の時間を奪う戦争の惨禍のすべてを、日常の低い視点から力強く描いた。本作は第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞、またアニメーション映画(片渕須直監督)がロングラン大ヒットを記録。こうのにとっても集大成的な作品となった。その後も漫画という表現に対する好奇心は尽きず、非凡な才能炸裂のエッセイ漫画「平凡倶楽部」、ボールペンだけで古事記を忠実に漫画化した「ぼおるぺん古事記」(古事記出版大賞稗田阿礼賞受賞)、東日本大震災の翌年から描き継がれている「日の鳥」、漫符を素材にした画期的な漫画図鑑「ギガタウン 漫符図譜」、百人一首と遊んだ華麗なるカラー1コマ漫画「百一 hyakuich」など、ひとつとして似ていない作品を続々と発表。最新作「空色心経」では般若心経とコロナ禍の日々を2色の糸で撚り合わせるように重ね、時空を超えた世界と日常を結んでみせた。ブログ「こうのの日々」では「空色心経」の制作過程やインコTさんとの日常、日々のスケッチなどを公開している。
6 監修者のコメント
こうの漫画を読んでいて、ふと気づくのですが、彼女の漫画には、1冊も似た作品がありません。
そしてまた、ふと気づいて驚くのですが、こうのさんの描く漫画は、いつも、ほとんど同じタッチで描かれています。
これが漫画だよな、と思わせる、読者をほっとさせる、あの愛らしいタッチのことです。
4コマ漫画でも、ほのぼのショートストーリーでも、神話ものでも、戦争ものでも、あの絵柄で一貫して描いてあります。戦争ものだから、と、急にシリアスな絵柄で、無理に描くことがないのです。
古代や現代、戦争や平和、動物や人間、どんなに世界が違っても、同じ毎日が続いている、かけがえのない時間が流れている、こうのの描く漫画を通じて、読者はそう感じることができるでしょう。
こうの史代は、まだ漫画になってないこと、誰も手掛けてないこと、手薄なところを探して漫画にしていく、漫画の世界の冒険家です。
だから読者は、彼女の漫画を読むたびに、こんな世界知らなかった!と、いつも思うのです。
そして、そんな読者に、彼女は、漫画の中から、こう呼びかけているようです。
見慣れたはずの「漫画」という表現が、新鮮な姿に見えてきたでしょ? ほら、まだこんなに描くことがあるよ、君も来ない?
1人の漫画家として、こうの史代が歩いてきたすべての道のりを、この展覧会ではたどります。
今回、佐藤太清記念美術館では、会場の広さの都合から、前期と後期で、作品の展示替えをする予定です。
見ていただくには、少し面倒をかけてしまいます。
でも、どちらを見てくださっても、充実の内容になるよう展示構成しています(もちろん、両方見ていただくのもうれしいです!)。楽しみに待っていてくださいね。
福永信(本展監修者/小説家)
7 監修者 福永信さんについて
1972年東京都生まれ。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)芸術学部中退。1998年、短編「読み終えて」でリトルモア・第1回ストリートノベル大賞を受賞しデビュー。主な小説集に「アクロバット前夜」、「コップとコッペパンとペン」(表題作でユリイカZ文学賞受賞)、「星座から見た地球」、「一一一一一」、「実在の娘達」などがある。アンソロジー編集に「こんにちは美術」、「小説の家」(第4回鮭児文学賞受賞)、企画編集に「フジモトマサル傑作集」、展覧会企画協力に「カワイオカムラ ムード・ホール」展、「絵本原画ニャー! 猫が歩く絵本の世界」展、「芦屋の時間 大コレクション」展など。「遠距離現在 Universal/Remote」展図録に短編小説を寄稿。2015年、第5回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。
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