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コミュニケーション手段にかかる合理的配慮について
平成28年4月に「障害者差別解消法」が施行され、合理的配慮の提供について定められました。
ここではコミュニケーションにかかる合理的配慮の事例を紹介します。
合理的配慮の提供のヒントとしていただければと思います。
※紹介している対応はあくまでも例示であり、障害のある人の希望や特性、状況などによって適切な対応が異なることがあります。
本人の希望や状況などに応じて、柔軟に対応してください。
視覚障害
見る力である視力や、見える範囲である視野の障害で、全く見えない全盲の人や、弱視と言って何らかの見えづさのある人がいます。弱視といっても症状は様々で、視野の障害には視野が狭くなる「狭窄(きょうさく)」、視野の一部が欠ける「欠損」、視野の一部が見えない「暗点」などがあります。
お店で目的の商品がどこにあるのか探すのが大変。
声をかけて案内しましょう。この時、腕をつかんで引っ張ったりせずに、自分の腕などを持ってもらい相手のペースに合わせて案内しましょう。
必要なものが分かれば代わりに取ってくることもできます。
困っていても周りに人がいるかどうかわからない。
視覚障害のある人が困っている様子を見かけたら、自分から声をかけましょう。
視覚障害のある人が周囲の情報を得るために使用している白いつえ(白杖)を垂直に頭上に掲げていたらそれはSOSのサインです。進んで声をかけましょう。
文章の字が小さいと見えにくい。文字の背景に色があると見えにくい。
大きな文字の資料や白黒反転の資料を用意しましょう。一般的には14ptのゴシック体が見えやすいと言われています。文字の背景に色を付けないなど配色にも注意しましょう。
バスを利用している時に周りの景色が見えないため、どこを走行しているのか分からない。
次に停まるバス停のアナウンスがあると分かります。「雨で滑りやすいです。」など外の状況のアナウンスもあると安心です。
「こちら」「あちら」など指示語では、どこにあるのか分からない。
「右側」「〇〇センチ前」など具体的に説明しましょう。時計の針の位置(3時の方向など)で説明する「クロックポジション」という方法もあります。
手続きなどで、書類の内容を把握することが難しい。また、書類への記入が難しい場合がある。
書類の内容について代読をすると分かりやすいです。
本人に了解を取って、代筆をすることもできます。代筆については前もってルールを決めておくとよいでしょう。
会議などの資料を見ることが難しい。
事前にメールなどでデータをお渡しすると音声読み上げソフトなどにより、内容を音声で確認できます。
資料を拡大すると分かりやすい人、白黒反転文字が分かりやすい人もいます。
どのような配慮を望んでいるか確認することが大切です。
聴覚障害
音が全く聞こえない状態や聞こえにくい状態の障害で、生まれながら障害のある人や、事故や病気等によって聞こえなくなる中途失聴の人もいます。
口の動きや表情を見て会話をしているので、マスクをしていると、口の動きや表情が分からず何を言われているのかわからない。
マスクを取って、口元が見えるように話すと伝わりやすいです。透明マスクも有効です。
マスクを外すことが難しい場合は、手話や身振り、手振り、筆談など音声ではなく見て理解できる方法で伝えましょう。
書いて説明してほしい時があるが「後ろに人が並んでしまうのでは」と気になって頼みにくい。
よくある質問に関しては、事前に資料を作成しておくとスムーズです。文章が苦手な人もいるので、わかりやすい表現を心掛けましょう。
聞き取りにくい言葉(例えば「1(イチ)」と「7(シチ)」)がある。
ゆっくり、はっきり、区切って話しましょう。身振り手振り、指差しなどを交えるとより分かりやすいです。
声をかけられても気づかないため、無視したと誤解される。
声をかけても返事がない、振り向かないときは「聴覚に障害がある人では?」と考えて対応しましょう。
相手から見える位置でコミュニケーションをとると伝わりやすいです。
病院や銀行の順番待ちで名前を呼ばれても分からない。
順番が来たら振動する器具を利用したり、文字による表示を行ったりすると分かりやすいです。直接座席まで呼びに行く方法もあります。
どのように合図するか事前に伝えておくと安心して待っていることができます。
レジでのコミュニケーションが難しいことがある。
コミュニケーション支援ボードを設置すると指差しでやり取りができるので、スムーズにコミュニケーションがとれます。
スーパーなどの店内放送や、電車の遅延や切離しの車内アナウンスが分からない。
掲示板に表示したり、紙に書いたり文字情報でもお知らせをすると分かりやすいです。
普通に話せているので、聞こえていると思われる。
話ができても聞こえない人がいることを知りましょう。
無人のATMや有料道路の料金所でトラブルがあっても、電話対応しかない。
事業者がその場にかけつける体制があり、その手段が掲示してあると安心です。テレビ電話が設置されると相談やトラブル対応がしやすくなります。
カードを紛失した時など電話による本人確認を求められてもできない。
Faxやメールでも対応できるようにしましょう。
知的障害
発達期に知的発達の遅れが現れ、複雑な事柄や、抽象的な概念の理解が困難である人がいます。
文章の内容や漢字が難しくて分からない。
わかりやすい表現を心掛け、漢字にはルビを振りましょう。
言葉だけの指示だと内容を十分に理解できずに混乱してしまうことがある。
身振り手振りやコミュニケーション支援ボードなどを用いて内容を伝えると伝わりやすくなります。
一度にたくさんのことを言われると分からなくなってしまう。抽象的な表現を理解することが苦手。
ゆっくり、はっきり、短く、具体的に話をしましょう。
困っていても「手伝って下さい」がなかなか言えない。「大丈夫?」と尋ねられると「大丈夫。」と言ってしまう。
「何かお手伝いしましょうか?」とゆっくり優しい口調で声を掛けましょう。