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長安寺 木造薬師如来立像
8 長安寺 木造薬師如来立像(市指定)
福知山市字奥野部 一軀 像高41.5cm 一木造 平安時代
左手に薬壺(やっこ)を持ち、右手を曲げて掌を立てる一般的な薬師如来立像である。
本躰はもちろん蓮肉(れんにく)まで榧(かや)かと思われる一材から彫成し、内刳は行っていない。両手先はいずれも別材による後補である。現在全面に蘇芳(すおう)を塗り頭部を群青彩として、眉・髭・瞳を墨描し、白眼に白土、唇に朱を点じている。反花とニ段の框(かまち)は像と一具ではないが時期差のないものである。
像はあくまで太造りで、躰部の奥行きは像の幅とほぼ同じ大きさで、これに鎬(しのぎ)立たせて力強い衣文(えもん)を刻んでいる。大腿部中央のX字状のひだや脛前の曲線文は九世紀一木造(いちぼくづくり)像の形を踏襲している。大粒の螺髪(らほつ)を刻む頭髪は額に目深く迫り、眼鼻立ちも雄偉で胸のくびれも強く彫り込み、堂々たる肉付きをあらわす。その森厳な風貌と量感豊かな体軀は地方作ながら、大阪.勝尾寺の薬師三尊像(重文)に一脈通じるもので、制作は九世紀末ないし十世紀初頭と思われる。
福知山地方では最も古い仏像の一つであり、個性豊かな一作として注目される。