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桐村家伝書
1 桐村家伝書(府指定)
個人 二十七冊 各冊子とも袋綴装
桐村家には、いわゆる地方文書のほかに、十六世紀後半から十七世紀初頭にかけて書写された、武術・芸能およびその他教養にかかわる典籍類が、二十七冊伝来している。各冊子とも楮(こうぞ)紙で袋綴装である。
内容は、生活全般に及んでいるが、茶・香関係のものは見あたらない。これらの伝書類はいずれも熟達した筆跡でもって書かれており、永禄二年(1559)三月十四日に書き写された、(5)「鷹百首」が最も古い。その他、書写年代の判明しないものも、筆跡・紙質から考えて、ほとんどが十六世紀後半から十七世紀初頭に書写されたものと考えられる。
ただし、(11)「料理献立」、(27)「消息之法」は、近世中期以降のものである。したがって、二十七冊を一括してきた桐村家ではあるが、この二冊だけが後世なんらかの理由によって混入したのであろう。
伝書を書写した人物については、すべてが桐村家の人物であったとはいいきれないが、「桐村采女」または「桐村采女実次」と書かれたものがもっとも多く九冊、宗春二冊、桐村喜兵衛一冊となっている。しかしこれらに人物についての具体的な経歴・事跡等は、桐村家においても現在不明である。
この時代の在地武士階級の文化的環境を伝える史料がこれだけまとまって残っていることは大変珍しく、その史料的価値は高い。