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高級まな板の職人 京都・白木屋 吉田 弘さん
お客さんが絶対に後悔しないまな板をつくる 大切に使ってもらえることを願って
高級まな板の職人 京都・白木屋 吉田弘さん
吉田さんと木の出会いは昭和40年頃、タンス店をしていた父の仕事を継いだことだった。特徴は、白木造りで、塗料を使わず木地のまま仕上げる。
時代とともにタンスの販売が伸び悩むと、販路を増やすため京都府へ相談。百貨店で物産展を開いている京都府物産協会を勧められ加入した。
きっかけはお客さんのひとりごと
物産展での出店を始め、数年が経った頃。あるお客さんのひとりごとが大きな転機になった。
「木のまな板はないのか…」
当時は、安くて軽いプラスチックのまな板が主流だった。高価で上質なまな板でも需要があることに気付かされた。
また、まな板に適したほおの材木も持っていることから、まな板づくりを決意。これが、京都・白木屋の始まりになった。
吉田さんは「苦情の中には宝物がいっぱい詰まっている」と笑います。苦情にこそ求められている商品のヒントがあるという。
販売を始めると驚くほど売れたそう。その後、毎年のように全国各地の百貨店を回り、たくさんの人に出会い、意見を取り入れる中で、いちょうやねこ柳など扱う材木が増えていった。
まな板の完成まで10年
お客さんには絶対に後悔させないという強い思いでまな板をつくるため、一切妥協はない。最も重要となるのは乾燥だ。木の癖が出て、ねじれたり反ったりするため、最低でも7~8年は待つ。それから仕上げに入るため、完成までおよそ10年はかかるという。
ねこ柳のまな板。良いまな板とされる3つのポイントを兼ね備えている。
1 ほどよくやわらかいため刃にやさしい
2 修復力があるため切れ目がなおる
3 抗菌作用でカビが発生しにくい
ねこ柳は最高級で長持ち
ねこ柳は、やわらかく修復力があり、最もまな板に適した材木だ。色が濃い部分は木の中心側で、抗菌作用が強い。この範囲が広いほど値段が跳ね上がるため、安くて3千円、高いもので12万円にもなる。
使用後は、布巾で拭くなど手入れをすることで、15年はもち、表面を削り直すことで、さらに15年は使えるという。
「数年前、ねこ柳を20年以上使っている人からわざわざ電話があってね。そんなに長く使ってもらえるなんてうれしかったですね」と吉田さんは微笑みます。丹精込めて作った一枚一枚の良さを感じてもらい、大切に使われることを願っている。
完成したまな板が並ぶ倉庫。
丹波・但馬地域のいちょう・ほお・柳・榧(かや)・ねこ柳を取り扱う。今は百貨店での販売はせず、主にインターネットで販売している。
京都・白木屋
〒620-0073 京都府福知山市上天津1118-3
TEL:0773-33-3639