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福知山は農業にうってつけの場所 「孫ターン」で夫婦こだわりの栽培
小林ふぁーむ 小林伸輔さん、加奈子さん
今から4年前に「孫ターン」で祖母の住む六十内へ移住し、「小林ふぁーむ」を営む小林さん夫妻。夫婦で力を合わせ開発した自慢のトマトジュースは、東京ビッグサイトで行われた大商談会で大賞を受賞。このビッグサイトの縁で東京のフィアットカフェの店頭に並ぶなど、市内のみならず全国にはばたきつつある小林ふぁーむの「トマトのじゅ~す」。百貨店では一本800円で販売され、オンラインショッピングでは8か月待ちの状態となるなど人気は絶好調。夫婦二人だけで営む「小林ふぁーむ」のエネルギーにせまってみた。
農業って奥深い!
北海道大学農学部を卒業した加奈子さんは、いつかは農業をとの思いを秘めながら、大阪府内で学習塾を経営していた。決意したのは45歳のとき。「農業がしたい、古い家に住みたい、動物が好き、すべてを満たしていたのは祖母のいる福知山でした」と加奈子さんは話す。幼少の頃から六十内の祖母が作るトマトとチーズをすりおろして作った離乳食で育ち、祖母のトマトを食べることを楽しみにしていた。
一方の伸輔さんは、農業に携わったことは全くなかった。加奈子さんから農業をやりたいと打ち明けられた伸輔さんは驚いたそう。「まさか自分が農業をやるとは思っていませんでした。興味もなく何も知らない状態でしたが、勉強を進めていく中で、試しに大阪と福知山で同じきゅうりを育ててみました。同じ種なのに味が全く違って、福知山で採れたきゅうりのほうが圧倒的に美味しかったです。同じものを作っても、気候、土、水で全然違うものになるんだと驚きでした。そこからですね、農業ってこんなに奥深いものなんだと興味を持ったのは」と伸輔さんは話す。
最初の味方はドッコイセbiz
好きではじめた農業だが、決して平坦な道のりではなかった。「最初は誰も認めてくれませんでした。否定されることが多くてどうすればいいのか迷っていました」そう話す加奈子さんに転機が訪れた。福知山産業支援センタードッコイセbizである。トマトジュースを持ち込み相談したところ大絶賛。値段の決め方に悩んでいたときも「丹精込めて作ったものなら中途半端な値段はだめ。良いものならしっかりと高くしてブランド力を上げたほうが良い」とアドバイスが。これをきっかけに迷いなく進むことができたという。
田んぼ、商談などは伸輔さん、畑は加奈子さん、と各々の得意分野で営む。畑のメインであるトマトで、加奈子さんは堆肥作りや力強い根張りとした栽培技術に無農薬で愛情を込めて育てる「かなこ農法」を実践している。そうして栽培されたトマトは昔ながらの甘くてすっぱい美味しいトマト。食べた人は「懐かしい!こういうトマトを食べたかったんや」と話すそう。
ピンチをチャンスに変えた
昨年の7月豪雨災害で小林ふぁーむも被災し、生産ができない状態となっていた。「これからどうしょうかと悩んでいました。ただ、ゆっくり考える時間もできて、農業を盛り上げる、より良い農業の仕組みってなんだろうかと、いろんな案が浮かび実行することができました。この考える時間がなければ今のような取り組みは生まれてこなかったと思います」と伸輔さんは話す。福知山市ではおそらく初となる農業のフランチャイズである。
若い人が就農しやすい仕組みづくりを
「若い人はとにかく初期投資を抑えたい。夫婦二人で営む我々には生産量が必要。土と種と技術を提供し、作物をすべてうちで買い取る。出来上がりが悪い場合はうちの指導不足。若い人にとってこの条件はおいしいものです。そうしてお互いの課題を埋め合わせて行う農業のフランチャイズに挑戦しています」と伸輔さんは張り切る。田んぼに商談会や販路開拓などを一手に引き受ける伸輔さんは、一人で東京の商談会に出向くなど大忙しの毎日。今では若手農家向けの講演依頼も増えたそう。
「これまでの農業は作って出して終わりでした。でもそれだと消費者が欲しているものが分からない。農家さんはうちよりも良いものを作られているはずです。でも、今何を作るべきなのか、どんな商品が好まれているのか、農家に大事なことは市場のニーズを把握することではないかな思います」
これからの福知山の農業を想う小林ふぁーむの今後に注目だ。
(写真)小林ふぁーむのロゴにもなっているブタのこじろおさん