日本・世界の鬼のことがわかる!京都府福知山市大江町に佇む鬼の博物館

〒620-0321
京都府福知山市
大江町仏性寺909
TEL.0773-56-1996
FAX.0773-56-1996




 大江山は丹後・丹波の国境にそびえる当地方きっての名山です。大江山を記した古書も数多くあり、『丹後国風土記残缺』、『西北紀行』(貝原益軒)、『秋山の記』(上田秋成)などが代表的なものです。
 こういった古書には「与謝ノ大山」「与謝大山」「大山」「大江山」「千丈嶽」「御嶽」などと書かれていますが、江戸時代の『西北紀行』や『秋山の記』では「大江山」となっています。
 この山には三つの伝説があります。一つは崇神天皇の弟にあたる日子坐王(ひこいますのきみ)の土蜘蛛退治伝説であり、もう一つは用明天皇の第三皇子麻呂子親王の鬼退治伝説であり、残り一つは御伽草子「酒呑童子」で知られる源頼光の鬼退治伝説です。これらの伝説にまつわる伝承地は今でも数多く残されています。→伝説の紹介はコチラ
大江山の雲海

大江山連峰(福知山市大江町より)
 一方、この地は丹波・丹後を結ぶ陸上交通の要路でもあり、大江山の東には普甲峠(宮津街道)、西には与謝峠(山陰道丹後支路)があります。与謝峠越えの道は古代山陰道丹後支道のルートです。また普甲峠越えの道は、宮津藩の公路として江戸時代初期に藩主京極高広によって新しく開かれた道であり、それ以前はさらに東の元普甲道を通り都への往来をしていました。今でも宮津街道には石畳の道が所々にのこり、参勤交代の行列や旅人が往来した面影を残しています。 
 →宮津街道の紹介はコチラ

 そのほか、山岳信仰修験道の山としても知られ、鬼嶽稲荷神社下手の洞窟には行者たちが厳しい修行をしたところと伝えられます。


  平成19年8月3日、「丹後天橋立大江山国定公園」として指定された大江山は、南は福知山市、北は与謝郡与謝野町と宮津市と接し、標高832.5mの千丈ヶ嶽を主峰として、西に赤石ヶ岳(736m)、北東に鳩ヶ峰(746m)、鍋塚(763m)、鬼の岩屋(686m)と連峰をなしています。
 この大江山連峰の北側斜面は、かなりの急傾斜をなして加悦谷の平地や宮津湾の海岸へ連なりますが、南の福知山市側では数条の支脈を分かち、複雑な起伏を繰り返しながら徐々に高度を下げて由良川沿いの低地に至ります。
 この複雑な地形のためか、動植物の生態面では極めて興味深い山であり、植物では種類が豊富で、南方系と北方系の草や花、そして樹林が混じり合う植物の宝庫として知られ、動物でもツキノワグマ、シカなどが見られるほか、野鳥ではヤマセミ・アカゲラをはじめ大江山全体で28科80種の生息記録があり、京都府内でも屈指の探鳥地として有名です。昆虫も豊富で、アカエゾゼミなど京都府内で初めてみつかったセミもいます。
 
●大江山の植物
 大江山は、植物の水平分布上は暖帯植物帯に属していますが、八合目付近(標高600m)から山頂にかけては温帯植物帯に属し、ここを境に下はクスノキ、カシなどの自然樹林、上はブナ、トチノキなどの大樹林と二分されています。
 その複雑な地形から、そこに生育している植物の種類も豊富で、主な植物の特徴は、次のとおりです。

1 内宮山、岩戸山付近には自然林が残されており、ここには暖地性の植物が生育している。
  イワギリソウ ヤマホウズキ シシンラン ヨコグラノキ など

2 鬼ヶ茶屋付近から千丈ヶ原、中ノ茶屋、普甲峠にかけての蛇紋岩地帯には大江山蛇紋岩植物といわれるものがある。
 ヒュウガミズキ マルバマンサク タンゴグミ など

3 稲荷自然林(600〜700m)が残されており、温帯植物が育っている。ここから上は温帯植物帯に入る。
  ブナ カツラ トチノキ サワグルミ など

4 大江山連峰は京都府下でも珍しく、山原をもっており、山原の植物が生育している。
  コウリンカ ムカゴソウ オキナグサ カセンソウ など

5 暖帯、温帯の植物が入り混じって分布している。
  上記のほか クロクキカズラ カタクリ など

6 この地域で発見されたものがある。
  タンゴグミ ヒュウガミズキ(野生として) ヒロハノオオウマツリゲ

これら植物の特徴は、学術的価値が高いばかりでなく、市民にも古くから親しまれてきたものです。自然は一度破壊されると回復は不可能とさえいわれ、その復原には長い年月を要します。これらの植物は永久に保存されなければならないものであり、今後、次世代へ伝承していくため、私たちすべての努力が必要だと思われます。

ブナ林

 知る人ぞ知る、大江山鬼嶽稲荷神社一帯のブナ原生林を観察しましょう。稲荷神社の森として伐採されず自然林として残っている貴重な森です。ブナの大木がうっそうと茂り、原始の森を思わせます。一帯の樹木の下には貴重な植物も多く見られます。平地では見られない草や木があるので、ポケット図鑑などを持参して調べてみましょう。

ヤマボウシ(ミズキ科)
ヒュウガミズキ(マンサク科)
各地の山地に生える落葉小高木。夏の頃開花。花びらに見えるものは総包で、ほんとうの花は極めて小さく中央の花穂に集まる。秋に実は紅熟し食べられる。紅葉が美しい。
《分布》本州 四国 九州
《花期》6〜7月


明治初年、上宮津の杉林の中で発見されたものが野生品種として最初のものである。大江山ではヒュウガミズキの分布は蛇紋岩地帯にかぎられており、河守鉱山跡付近から中ノ茶屋・普甲峠にかけては特に多い。花は鮮黄色早春に咲く。葉は小形で密につく。庭木として人家に植えられる。高さ2〜3mになる。
《分布》本州(中部以西)〜近畿 四国 九州の丘陵のやせ地
《花期》3〜4月

タニウツギ(スイカズラ科)
イワガラミ(ユキノシタ科)
主に日本海側の日当たりのよい山野に普通に生える落葉低木。下部からよく分枝して株立ちになり、高さ2〜5mになる。葉裏に白い毛が密生して白っぽく見えるが、主脈上はほとんど無毛という特徴がある。ピンク色の美花をつける。
《分布》北海道(西部) 本州(日本海側)
《花期》5〜7月
山地に生える落葉つる植物。茎から気根を多数出して岩や木にのぼる。7月頃開花する。ガクの一片が白色大形となり花弁様となる。
《生育地》 山地 
《分布》北海道 本州 四国 九州
《花期》5〜7月

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●大江山の鳥
 大江山には色々な鳥が住んでいます。林の中で耳を澄ませば色々な鳴き声が聞こえてきます。姿を見つけるのはたやすくないのですが、見つけたときの感動はひとしお。双眼鏡、鳥の図鑑を持っていくと識別するのに便利です。
キジバト、イカル、ホホジロ、メジロ、ヒヨドリ、ウグイス、アオゲラ、アカゲラ、コゲラ、アオバズク、フクロウ、ジョウビタキ、谷筋にはカワガラス、ヤマセミなど種類が多いのが特徴です。

●大江山の蝶


オオムラサキ

 季節により種類が異なりますが、アゲハチョウ科、シロチョウ科、マダラチョウ科、テングチョウ科、タテハチョウ科、ヒョウモンチョウ科、シジミチョウ科、セセリチョウ科、ジャノメチョウ科など、各科の蝶が見られます。中にはアオギマダラ、オオムラサキなど見るに値する貴重な蝶もいます。

●大江山のセミ


左からアカエゾゼミ、エゾゼミ、ヒメハルゼミ、クマゼミ
大江山に住むセミは、ニイニイゼミ、コエゾゼミ、エゾゼミ、アカエゾゼミ、クマゼミ、アブラゼミ、ハルゼミ、エゾハルゼミ、ヒメハルゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、チッチゼミの13種類。季節や標高によって色々な鳴き声が聞こえてきますが、ぬけがらを集めてみると、住んでいる場所がよくわかります。
 コエゾゼミ、アカエゾゼミ、エゾハルゼミ、ヒメハルゼミの4種類は京都府内では大江山で初めて見つかったセミです。

●大江山の岩
蛇紋岩

黄銅鉱

蛇紋岩の露頭

磨いた蛇紋岩

頁(ケツ)岩

花崗岩

橄欖(カンラン)岩

 日本の鬼の交流博物館付近は、旧日本鉱業河守鉱山のあったところで、鉱山跡地を探せば鉱石が多く落ちています。ハンマーを持っていき、茶録酸化した石を見つけだして割ってみると、割れ目の中にキラリと光る鉱物が現れます。河守鉱山は、主として銅を産出していた鉱山なので、黄銅鉱・磁硫鉄鋼・硫砒鉄鋼などが含まれている鉱石を簡単に見つけることができます。
また、鉱石と混じって蛇紋岩・滑石(タルク)なども見つけることができます。

●大江山の地質
 大江山の地質は、狭い地域内ながら次の三つの地質区に分かれており、地質学的には極めて興味深い地域となっています。

1、超苦鉄質岩類(約4.6億年前)
 大江山連峰の大部分を構成する黒色〜暗緑色の緻密で重い岩石で、橄欖岩や輝石岩などを主体とします。その範囲は仏性寺の鬼ヶ茶屋付近から千丈ヶ原を結ぶ線より北側の尾根一帯から赤岩山にかけて大きく広がります。これら超苦鉄質岩類は鉄やマグネシウムに富む成分をもち、水と反応すると暗緑〜黄緑色の岩石に変質することが多く、蛇皮の色に似た光沢質をもつことから蛇紋岩という名がつけられています。岩石の絶対年代は約4.6億年前(古生代オルドビス紀)を示します。

2、古生層(約2.5億年前)
 千丈ヶ嶽を含む大江山の南側の大部分を構成する地質で、下見谷層とよばれています。地層は、暗灰色の頁岩・粘板岩を主とし、砂岩やチャート、緑色岩を混じえます。時代はペルム紀(約2.5億年前)と考えられています。

3、花崗岩類(約4500万年前〜6800万年前)
 大江山の北側、加悦・宮津側で広く分布する岩石です。宮津花崗岩とよばれています。主に粗粒〜中粒の黒雲母花崗岩からなり、肉眼では白と黒の粒状岩類です。この宮津花崗岩の絶対年代は4500万年〜6800万年前であり、中生代白亜紀末から新生代暁新世にあたります。
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